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萩原和幸の「寝ても覚めてもカメラ」

「ZEISS IKON NETTARの話」


カメラ:ZEISS IKON NETTAR Ⅱc 518/2
レンズ:Nover-Anastigmat 105mmF4.5

手作りお菓子のお店をやっている知り合いがいる。
とても可愛いお店なので、そのお店にインテリアとして置くための
古いカメラをプレゼントしようかと考えていた。
インテリアとして置くのならば、
蛇腹のスプリングカメラが似合いそうだ。
中古カメラ店をのぞく時に
蛇腹スプリングカメラを頭に入れておくことに。

数日後、行きつけの中古カメラ店できれいなカメラに目が留った。
それが『ZEISS IKON NETTAR Ⅱc 518/2』。
高級蛇腹スプリングカメラ『IKONTA』の
廉価版として発売されたカメラだ。
ケースから取り出してもらい、じっくりと観察。
見れば見るほどきれいだ。レンズは曇りもホコリもない。
ファインダーもクリアだ。なにより蛇腹がまったく痛んでいない。
前のオーナーがいかに大事に使っていたかがわかる。

このカメラは出所がはっきりしていた。
前のオーナーが直接このカメラ店に引き取りをお願いにきたそうだ。
その方は僕の親くらいの年齢の婦人で、
新品でこのカメラをご自身で買われたとのこと。
NETTAR 518/2の製造期間は1949~1957年。
レンズがコーティングされていることと、
ボディに入った二本線から、おそらく最終型だ。
だとすれば、一番最後の製造だとしても、今から53年前にもなる。
失礼だが当時カメラは高級品で、
女性がカメラを持つことも珍しかっただろうし、
年齢を考えると購入にはかなりの覚悟が必要だったはず。
購入する時に「本当に貴女が使うんですか?」と、
何度も質問されたとのことだ。
きっと大変な思いをして買ったカメラだから、
大切な行事の時に撮影して、普段は大事にしまっておいたのだろう。
話を聞いたら、どうしても手元に置いておきたくなった。
前のオーナーに敬意を表す意味で
インテリアに落ち着かせるのではなく
現役のカメラとして使いたくなった。
畳めば非常にコンパクト。
これで中判が撮れるとなれば、どこにでも持ち出したい。

僕にしては珍しく相場より高値で購入した。
でもコンディションを考えると妥当に思えた。
何より元々相場はかなり安価なカメラなので、
ちょっと高いとしても知れている。
納得のいくカメラなら、たまにはこんな買い方もいいものだ。

萩原和幸
1969年、静岡県出身。
日々、中古カメラ店を巡りながら、
独自の目線でカメラやレンズ、アクセサリーをチェック。
お買い得品を探すのが好き。
仕事以外の撮影はフィルムカメラで行なうことがほとんど。
露出計も持たず、マニュアルで気ままに撮るのが撮影スタイル。
日本写真家協会(JPS)会員。
オフィシャルサイト:http://www.ikkyow.com/


カメラ名称:ZEISS IKON NETTAR Ⅱc 518/2
カテゴリー:蛇腹スプリングカメラ
画面サイズ:6×9cm判
シャッタースピード:B、1/25~1/200秒
レンズ:Nover-Anastigmat 105mmF4.5
大きさ・重量:W160×H95×130mm(折りたたみ時45mm)、771g
中古相場:8,000~20,000円