
カメラ:富士フイルム クラッセS
レンズ:スーパーEBCフジノン38mmF2.8
露出:絞りf8、シャッタースピード オート
フィルム:PRO400H
工業製品には、とかく国内用と輸出用があります。
例えば、車や家電製品なんかがいい例ですね。
国産車は当然右ハンドルなので、英国系の国を除けば、
輸出用はほとんど左ハンドル化しなければなりませんし、
それぞれの国の交通事情に合わせてエアコンの容量や排ガスの濃度、
各種安全装備の追加などの対策をする必要があります。
家電製品も各国の電圧、コンセント形状に対応させるのはもちろん
のこと、TVなどは各国向けに色の調整を済ませてから
出荷しているという話を聞いたことがあります。
こうした製品の仕向け地別対応は、
その商品を他国で販売する上でとても重要なポイントとなります。
フィルムも全く同じです。例えばPRO400。輸出用はPRO400Hですが、
いずれもブライダルスナップカメラマンの定番フィルムです。
よって、想定される被写体はウェディングドレスを着た花嫁
ということになりますね。
ここでのポイントは、第一に肌の再現性です。
当然、日本人の好きな肌色と欧米人の好きな肌色は
全く異なりますから、まずはカラーバランスを調整すること
になります。しかもハイライト、シャドーそれぞれ別々に。
具体的には、PRO400HはハイライトでC(シアン)が強く、
シャドー部はR(レッド)が強く出ます。
一方、国内向けPRO400はハイライトがM(マゼンタ)で
シャドーがG(グリーン)。全然違いますよね?
次に階調再現。ただでさえ軟調のPRO400をさらに軟らかくしたのが
PRO400Hです。かなりのオーバー露光でもハイライトが飛ばず、
階調を残してくれます。
比較的硬調高彩度のフィルムが多い同社製フィルムの中で、
この軟らかさは貴重です。
これらカラーバランスと階調再現の違いが2つのPRO400の個性を
分けていると言っても過言ではありません。
また、現像適性の違いもあります。
カラーネガの現像液は海外がC-41、国内がCN-16です。
もちろん互換性はありますが、物理的にモノは異なります。
これも、同じハイオクガソリンでも仕向け地によって
成分が微妙に異なるのと似ていますね。
結局使われるのは海外なわけですから、輸出用フィルムは
国産とはいえ海外の現像環境で処理されることを
想定して設計されています。
他にも違いはまだまだありますが、キリがないのでこの辺で・・・。
でも、フィルムって奥が深いと思いませんか?
次回はそんな海外向けフィルムの使い方についてお話しましょう。
上野 隆
全国の写真教室や撮影会の講師として活動中。
写真撮影の技術ではなく、写真の楽しさをテーマにし
た授業内容が大好評。写真展や写真関連イベントのプ
ロデューサーとしても定評がある。
フィルム写真のアナリストとして、新聞、雑誌、各種
写真イベントへの登場多数。写真専門誌への寄稿多数。
フォトマスター検定「エキスパート」取得。
英国王立写真協会会員。
上野 隆氏が主宰する写真教室はこちら。