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	<title>カメラ・ライフ Web Site &#187; 神戸眞平の「北海道に恋した風」</title>
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	<description>カメラは毎日を楽しくハッピーにする</description>
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		<title>♯12（最終回）　ちいさな奇跡～札幌</title>
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		<pubDate>Wed, 01 Dec 2010 00:29:03 +0000</pubDate>
		<dc:creator>CL編集部</dc:creator>
				<category><![CDATA[CL Column]]></category>
		<category><![CDATA[神戸眞平の「北海道に恋した風」]]></category>

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		<description><![CDATA[トラベルグラファー・神戸眞平さんによる旅エッセイ「北海道に恋した風」。第12回目(最終回）は「ちいさな奇跡～札幌」です。]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><img src="http://cameralife.jp/wp/wp-content/uploads/2010/11/b4f25b06eb04cb18980ca2a0929f29df.jpg" alt="" title="" width="670" height="447" class="alignleft size-full wp-image-2777" /><br />
撮影地：札幌　OLYMPUS OM-1N　ZUIKO 50mmF1.8　f5.6　1/60　NEOPAN400PRESTO<br />
<br />
網走へ向かう夜行列車は、ほぼ満席だった。<br />
函館からの接続列車が札幌駅に到着すると、さらに乗客がどやどやと乗り込んで来た。<br />
「となり、空いてますか」という声がしたので見ると、大きな荷物を持った女性が立っていた。<br />
童顔でかなり小柄な、ぱっと見たところ中学生のような感じの人だった。<br />
彼女の手が網棚に届かないので、荷物を上げるのを手伝ってあげて、<br />
それから、どちらからともなく自己紹介を始めた。<br />
彼女はＡさんという、Ｋ大学の学生だった。<br />
夏の北海道は自転車で何度も走っているが、冬に来るのは初めてという。<br />
ひとしきりお互いの旅の話をすると、彼女はアーモンドチョコを出して２～３個食べて、<br />
「あとは全部、食べちゃってね」と、僕のほうにグイと箱を差し出した。<br />
寝る前にチョコを山ほど食べる人はいないだろうが、<br />
彼女の差し出す勢いに負けて、僕は箱の中に残っていたすべてを食べてしまった。<br />
その晩、鼻血が出ないですんだのは幸いだった。<br />
　<br />
雪の影響で、列車はかなり遅れて網走駅に到着した。<br />
僕は乗り継ぎの列車に間に合わず、彼女も特に予定がないというので、<br />
天都山や能取岬、トーフツ湖をバスで一緒に回ることにした。<br />
「私のことも写してね」と言うので、カメラを持っていない彼女のために写真を撮った。<br />
駅前に戻ったところで、喫茶店でひと息入れる。<br />
彼女は今晩、斜里のユースホステルに泊まり、明日は知床のツアーに参加するという。<br />
僕は釧路まで行って、そこから再び札幌に戻る予定だ。<br />
途中まで方向が同じなので、昼過ぎの列車に一緒に乗る。<br />
しばらく車内でとりとめのない会話をしていたが、<br />
斜里駅が近づくと、ふたりとも無口になってしまった。<br />
「写真を送ってね」と言うと、彼女は自分の住所を書いた紙を僕に手渡した。<br />
ホームで手を振る彼女は、もう中学生のようには見えなかった。</p>
<p>数日後、僕は稚内へ向かうために札幌駅にいた。<br />
列車を待つ間、ふと駅の掲示板を見ると、<br />
「斜里ユースホステルに泊まったＫ大学のあなた、裏面を見よ」<br />
という紙が貼ってあった。<br />
ひょっとしてと思い、めくってみると、<br />
「Ｋ大学のＡさん、私は知床ツアーに同行したＳ大学の者です。<br />
あなたに住所を聞かれたのに答えなかったので、ここに書きます。　<br />
絶対に見てくれるものと信じています」<br />
と書いてあった。<br />
彼女の住所をたまたま知っている僕が、この掲示板をたまたま見ている。<br />
これは、ちょっとした奇跡的なことのように思えた。<br />
稚内に着くと、僕は文房具屋を探して便箋を買った。<br />
そして、メモしておいた掲示板の文章を書き写して彼女に送った。<br />
　<br />
北海道を走る夜行列車は、今はほとんどなくなった。<br />
札幌駅も新しくなり、情報交換ができる掲示板もなくなった。<br />
しかし、夜行列車や掲示板がなくなっても、僕の旅は続いている。<br />
なぜまた北海道に行くのかと聞かれても、はっきりとした理由はわからない。<br />
明るくて暗い北海道独特の雰囲気が、僕に合っているのかもしれない。<br />
使い慣れたカメラを手に、風のように駆け抜けながら、<br />
これからも僕は、北の大地を旅していくことだろう。</p>
<p><strong>写真・文　神戸眞平</strong>（ごうど しんぺい／トラベルグラファー）</p>
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		<title>♯11 肥に落ちて～美瑛</title>
		<link>http://cameralife.jp/cl-column/2755</link>
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		<pubDate>Mon, 01 Nov 2010 02:44:07 +0000</pubDate>
		<dc:creator>CL編集部</dc:creator>
				<category><![CDATA[CL Column]]></category>
		<category><![CDATA[神戸眞平の「北海道に恋した風」]]></category>

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		<description><![CDATA[トラベルグラファー・神戸眞平さんによる旅エッセイ「北海道に恋した風」。第11回目は「肥に落ちて～美瑛」です。]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><img src="http://cameralife.jp/wp/wp-content/uploads/2010/11/goudo_11.jpg" alt="" title="" width="670" height="447" class="aligncenter size-full wp-image-2757" /><br />
撮影地：美瑛　OLYMPUS μ　35mmF3.5　プログラムAE　NEOPAN400PRESTO<br />
<br />
11月に美瑛を自転車で走ろうなどと考えたのが、そもそもの間違いだった。<br />
駅前でレンタサイクルを借りて、元気に走り始めたまでは良かったが、<br />
美馬牛方面に行こうとしたところ、道が工事中で通行止めになっていた。<br />
マイルドセブンの丘に向かう看板があったので、何気なくそちらにハンドルを向けた。<br />
しかし、まさかこれが悪魔のお誘いであるとは、その時は気づく由もなかった。</p>
<p>顔に当たると痛いほどの雪が降り始めたが、頑張って坂を登りきると、<br />
雲間から太陽がちょうど顔を出して、一筋の光が射し込んできた。<br />
まさに、フォトジェニックな光景である。<br />
僕は、その光に誘われるように自転車から降りて、<br />
カメラを持ったまま、太陽に向かってふらふらと歩き始めた。<br />
その瞬間である。<br />
突然、地面を踏み抜いた感じがして、自分の身長が低くなった。<br />
何が起きたのか一瞬わからなかったが、気がつくと膝まで地面に埋まっている。<br />
もがきながら脱出すると、ブルーのジーパンの膝から下が茶色くなっている。<br />
そして、臭い。<br />
肥に落ちたらしい。<br />
地面にうっすらと雪が積もっていたため、道路と肥溜めの境界に気づかなかったのだ。<br />
まるで、コントだ。　<br />
笑点のこん平師匠ではないか。　<br />
右手をとっさに挙げてカメラに被害が及ばなかったのは、不幸中の幸いといえるだろう。<br />
たちまちにして、レンタサイクルの旅は強制終了である。<br />
二次災害が起こらないように注意しながら、慎重にペダルを踏んで駅へと戻る。<br />
自転車が汚れないように、極度なガニマタで漕いで行く。<br />
レンタサイクル屋に戻り、「すみません、洗わさせてください」とお願いすると、<br />
店の人は僕を見て驚愕の表情を見せたものの、すぐにバケツにお湯を用意してくれた。<br />
しかし、そんなバケツで洗い流せる生易しいものではないのだ。<br />
びっしりと、こびりついているのだ。<br />
臭いのと冷たいのと、どちらを取るか究極の選択だが、<br />
この際、冷たいのを我慢するしかない。<br />
店の外のホースを借りて、氷のような水道水でジーパンを洗う。<br />
上着は汚れた部分を拭き取り、貰った段ボール箱に詰めて自宅へ送る。<br />
箱の持ち手の小さな穴から、微妙な臭気が溢れ出していた。<br />
クロネコさんも運びながら、「この中のものは、まさか…ウ〇チ？」と思ったに違いない。<br />
この日は旭川に宿を取っているので、そこまで行かないといけない。<br />
洗ったとはいっても、僕の下半身はまだ十分に臭い。<br />
ジーパンもびしょびしょなので、列車内で他人と隣り合わせではいられない。<br />
「あの人、ちょっと…」などと通報されようものなら、末代までの恥だ。<br />
他の乗客から一番離れたところに立ってやり過ごし、<br />
新しいお客が乗ってくるたびに、右往左往して車内を逃げ回る。<br />
ホテルのフロントでは、目立たないように壁づたいに歩く。<br />
Mr.ビーンのようで、かえって怪しい。<br />
部屋に入ってから、さっそくシャワーで体を洗ったが、<br />
キレイキレイの力を借りても、クサイクサイのままだ。<br />
靴は使えなくなったので、新しいのを買わないといけない。<br />
東京に帰るにしても、裸足では飛行機に乗せてもらえないだろう。<br />
こんな足で試し履きをさせてくれる店はないだろうなと思いつつも、<br />
靴屋を探しに、闇にまぎれて街の中へ出たのだった。</p>
<p><strong>写真・文　神戸眞平</strong>（ごうど しんぺい／トラベルグラファー）</p>
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		<item>
		<title>♯10 おんぼろダンプとおじいさん～美馬牛</title>
		<link>http://cameralife.jp/cl-column/2502</link>
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		<pubDate>Tue, 05 Oct 2010 07:14:54 +0000</pubDate>
		<dc:creator>CL編集部</dc:creator>
				<category><![CDATA[CL Column]]></category>
		<category><![CDATA[神戸眞平の「北海道に恋した風」]]></category>

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		<description><![CDATA[トラベルグラファー・神戸眞平さんによる旅エッセイ「北海道に恋した風」。第10回目は、「おんぼろダンプとおじいさん～美馬牛」です。 ]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><img src="http://cameralife.jp/wp/wp-content/uploads/2010/10/10.jpg" alt="" title="" width="670" height="447" class="alignleft size-full wp-image-2503" /><br />
撮影地：美馬牛　OLYMPUS OM-1N　ZUIKO28mmF3.5　ｆ11　1/1000　NEOPAN400PRESTO<br />
<br />
ある日、美馬牛の丘で写真を撮っていると、<br />
「紅葉の綺麗なところがあるから、乗って行かないか」という声が聞こえた。<br />
声のする方向を振り返って見ると、採石場で使うような大きなダンプカーが停まっていて、<br />
つば付き帽を被った男が、恐ろしく高い位置にある運転席から顔を出していた。<br />
そして何よりも驚いたのは、そのダンプカーであった。<br />
いまの時代、どこを探しても見つからないような、<br />
昭和初期に作られたような、見事なまでの古さとボロさだった。<br />
撮影をしている最中だったので、一度はお断りしたものの、<br />
「本当に綺麗だから、乗って行きなよ」と何度も言うので、<br />
なんとなく断りづらくなって、乗せてもらうことになった。<br />
はしごを使い、ダンプカーの助手席に上がってみて驚いた。<br />
内部も外観に負けず劣らずボロボロで、これでよく走っているなと思うほどだった。<br />
さらに、下にいる時はわからなかったが、<br />
男の人も近くで見ると、どう若くサバを読んでも８０歳くらいにしか見えない老人だった。<br />
このおんぼろダンプとおじいさんで大丈夫だろうか、という僕の不安をよそに、<br />
「さあ、行くよ」という声とともに、ダンプカーは走り始めた。<br />
いや、正しくは動き始めたというべきだろう。<br />
びっくりするくらいの超低速で、はっきり言えば自分で走ったほうが速いくらいだ。<br />
おじいさんは、不必要なほど細かくギアチェンジをするのだが、<br />
そのたびにレバーがもぎ取れそうになり、ガクンガクンと車体が揺れて止まりそうになった。<br />
普通の車だと１分で行けそうなところを１０分かけて走り、<br />
あるところで急に左折すると、道とは思えない雑木林の中に突入した。<br />
地面は恐ろしくデコボコで、道なき道をカメノコのように走るが、<br />
このダンプカーは、サスペンションが開発される前に製造されたか、<br />
サスペンションを付け忘れているのではないかと思うほど、ガッツンガッツンと揺れた。<br />
ドアは気が狂ったようにガタガタいいまくり、いまにも外れて落ちそうだ。<br />
遊園地の下手なアトラクションよりも格段に怖い。<br />
何かに摑まっていないと天井に頭をぶつけそうで、<br />
車酔いで吐く前に、舌を噛んで死にそうだ。<br />
「降ろしてくれ！」と心の中で叫び続けること、さらに１０分。<br />
急に視界が開けて、ダンプカーは停まった。<br />
ようやく落ち着いてあたりを見回すと、そこは四方を小さな山に囲まれた窪地で、<br />
さっきまでいた場所とは比べものにならないほど、確かに紅葉は美しかった。<br />
おじいさんは、「ゆっくり撮っていいよ」と言うと、<br />
停めてあったパワーショベルで、ダンプカーに土を積み始めた。<br />
そして１０分ほどで土を積み終わると、美味しそうに煙草を吹かし始めた。<br />
あまりに綺麗な紅葉なので、「あと５分いいですか」とお願いすると、<br />
おじいさんは再び「ゆっくり撮っていいよ」と言って、２本目の煙草に火をつけた。<br />
大量に土を積んだダンプカーが動くかどうか心配だったが、動くには動いて、<br />
来た時よりもさらに時間をかけて、さっき乗せてもらった場所まで戻って来た。<br />
お礼を言って降ろしてもらい、ダンプカーを見送ったが、<br />
土を満載した後ろ姿は苦しそうで、タイヤがいまにも外れそうに見えた。<br />
ダンプカーを降りた後も、しばらくは体の揺れがおさまらなかった。</p>
<p>あれからさまざまな季節、何度か美馬牛を訪れる機会があり、<br />
あのダンプカーが走っていないかと、いつもあたりを見回しているのだが、<br />
おんぼろダンプにもおじいさんにも、それ以来、もう出会うことはなかった。</p>
<p><strong>写真・文　神戸眞平</strong>（ごうど しんぺい／トラベルグラファー）</p>
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		<item>
		<title>♯09 ふらりと北へ、ゆらりと島へ～焼尻</title>
		<link>http://cameralife.jp/cl-column/2491</link>
		<comments>http://cameralife.jp/cl-column/2491#comments</comments>
		<pubDate>Mon, 06 Sep 2010 04:47:47 +0000</pubDate>
		<dc:creator>CL編集部</dc:creator>
				<category><![CDATA[CL Column]]></category>
		<category><![CDATA[神戸眞平の「北海道に恋した風」]]></category>

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		<description><![CDATA[トラベルグラファー・神戸眞平さんによる旅エッセイ「北海道に恋した風」。第9回目は「ふらりと北へ、ゆらりと島へ～焼尻」です。]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><img src="http://cameralife.jp/wp/wp-content/uploads/2010/09/09.jpg" alt="" title="" width="670" height="447" class="alignleft size-full wp-image-2494" /><br />
撮影地：焼尻　OLYMPUS OM-1N　ZUIKO100mmF2　f8　1/500　NEOPAN400PRESTO<br />
<br />
忙しかった仕事が一段落して、少し休みが取れたので、<br />
一度訪れてみたかった焼尻島に行くことにした。<br />
島への船が出るフェリーターミナルは、思っていたよりもこじんまりとしていた。<br />
待合所には、首だけになったトドの剥製が置いてあり、<br />
その下に丁寧に、「トド太郎君」と名前が書かれていた。<br />
なんとなく微妙な感じがするのは、僕だけだろうか。<br />
船内は意外なほどに狭く、乗客でいっぱいだ。<br />
２等船室には４畳半ほどのスペースが４つあり、そこにびっしりと人が座っていた。<br />
１等船室はどうなのだろうと、ちょっと覗いてみると、<br />
そちらも広くはなく、それほど立派とはいえない長椅子が並んでいるだけだった。<br />
船内の混雑ぶりに仕方なくデッキに出て、音楽を聴いていることにした。<br />
海はベタ凪で穏やかだった。</p>
<p>焼尻島に着いたところで、この日の宿を探すことにした。<br />
海岸沿いに良さそうな旅館を見つけて、引き戸を開けて中に入る。<br />
少し怪訝そうな顔をされたが、なんとか泊めてもらえることになった。<br />
宿が決まったところで、島を時計回りに歩いてみることにした。<br />
道の左右には、マツヨイグサやハマナスが咲いている。<br />
しばらく歩くと、めん羊牧場があった。<br />
船着き場の２階に、めん羊バーベキューハウスがあるが、<br />
ここのヒツジを焼いて食べているのだろうか。<br />
牧場にヒツジは見当たらず、なぜかヤギが１頭いた。<br />
退屈していたのか僕に近寄って来たが、片方の角が折れている。<br />
いつも思うのだが、ヤギはあの細い黒目でどれだけ見えているのだろうか。<br />
ヤギに別れを告げて、緩やかな上り坂を歩く。<br />
船からはかなりの人が降りたはずなのに、<br />
歩けども歩けども誰ともすれ違うことがなく、まるで無人島のようだ。<br />
汗が噴き出してきたところで、ようやく休憩所があった。<br />
すでに５キロほど歩いているが、さらにあと５キロ歩くと島を一周できるようだ。<br />
休憩所から先は下りなので、戻りの道が楽なのは幸いだった。</p>
<p>島を一周して旅館に戻ると電話が鳴って、「食事の用意ができました」と言う。<br />
食堂に下りると、並んでいる夕食はひとり分だけだった。<br />
今日の宿泊客は、僕だけのようだ。<br />
泊めてもらうお願いをした時に、変な顔をされたわけがわかった。<br />
僕が泊まらなければ、この日は休みにすることができたのだろう。<br />
食事が終ると、「大浴場の用意ができました」と言う。<br />
あまり遅くに風呂に入るのは申し訳ないので、すぐに浴場へ向かった。<br />
浴場までの廊下は、灯りが消えていて真っ暗だ。<br />
自力で電気をつけながら進んでなんとかたどり着き、風呂場に入って驚いた。<br />
大浴場というにはあまりに狭く、ちょっと大きな家庭の風呂のようだ。<br />
湯船には３人くらいしか入れないし、洗い場はひとつしかない。<br />
間違ったところに入ってしまったのかと、一度外に出てみた。<br />
入口には確かに大浴場と書いてあるが、収容人員３人とも書いてあった。<br />
３人しか入れない大浴場というのは、初めてだ。<br />
この旅館は１００人以上宿泊できるらしいが、その場合どのように対処するのだろう。<br />
しかし、今日は他に宿泊客はいないのだから、大浴場が小さかろうが問題はない。<br />
ひとりでゆっくりと湯船に浸かりながら、旅の疲れを癒したのだった。</p>
<p><strong>写真・文　神戸眞平</strong>（ごうど しんぺい／トラベルグラファー）</p>
]]></content:encoded>
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		</item>
		<item>
		<title>♯08 静かに食べたいイカソーメン～函館</title>
		<link>http://cameralife.jp/cl-column/2476</link>
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		<pubDate>Mon, 02 Aug 2010 09:36:57 +0000</pubDate>
		<dc:creator>CL編集部</dc:creator>
				<category><![CDATA[CL Column]]></category>
		<category><![CDATA[神戸眞平の「北海道に恋した風」]]></category>

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		<description><![CDATA[トラベルグラファー・神戸眞平さんによる旅エッセイ「北海道に恋した風」。第8回目は「静かに食べたいイカソーメン～函館」です。]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><img src="http://cameralife.jp/wp/wp-content/uploads/2010/08/dc5b98c1515bf20dcc692260deb28386.jpg" alt="" title="" width="670" height="447" class="alignleft size-full wp-image-2478" /><br />
撮影地：函館　OLYMPUS OM-1N  ZUIKO21mm F3.5　f8　1/250　NEOPAN400PRESTO<br />
<br />
函館の夏の風物詩といえば、イカだ。<br />
普段はとりたててイカ好きというわけではないが、<br />
函館で食べるイカは、新鮮なせいか気のせいか、やはり美味しく感じる。<br />
その日も朝食はイカにしようと、何度か入ったことのある店に向かった。<br />
ホッケのつみれ汁が美味しい店だ。<br />
しかし、店はすいていたものの、<br />
「１０分から３０分かかります」と言われてしまった。<br />
１０分から３０分とは幅が広く、どういうことなのだろうと思いつつも、<br />
理由を聞くのも面倒なので、別の店に行くことにした。<br />
勘を頼りに少し歩いて、間口の小さな定食屋に入ってみた。<br />
朝食時だというのに、店の中はひっそりとして誰もいなかった。</p>
<p>カウンターに座ると、迷うことなくイカソーメン定食を注文した。<br />
すると、ごつい顔をしたオヤジさんが厨房から現れて、<br />
「定食なら、ソーメンじゃなくてイカ刺しにしなよ」と言った。<br />
壁に貼ってあるお品書きには、イカソーメン定食とイカ刺し定食が並んでいる。<br />
しかし、イカソーメン定食は推奨していないらしい。<br />
いきなりのオヤジさんの迫力に圧倒されて、<br />
「じゃあ、お願いします」と言ってしまった後で、少し後悔した。<br />
イカソーメンだろうがイカ刺しだろうが、イカが食べられればいいのだと、<br />
自分で自分に言い聞かせながら待っていると、やはりイカ刺し定食が出てきた。<br />
函館のイカは、見るからに新鮮そのものだ。<br />
さっそく食べようと、醤油を小皿に出してイカをピチャリとつけたら、<br />
「だめだ、そんな食べ方じゃ。イカに醤油をドバッとかけて、飯の上にドンと乗せるんだ」と、<br />
頭の上から、オヤジさんの怒鳴るような声が聞こえてきた。<br />
オヤジさんはカウンター越しに、僕の食べる様子を観察している。<br />
仕方なくイカの上に醤油をかけて、ご飯に乗せた。<br />
人に食べるところを見られて、食べ方の指導までされるのは辛い。<br />
途中でちょっと味噌汁でも飲もうものなら、<br />
「なんでいま、味噌汁なんか飲むんだ」と、どやされかねない雰囲気だ。<br />
これは面倒なことになったと思っていると、６人のグループの観光客が入ってきた。<br />
ひとりを相手にするよりも、大人数を相手にするほうが張り合いがあるのだろう。<br />
オヤジさんの矛先は僕から外れて、メニューを眺めている６人のほうへと向かった。<br />
そして、「イカソーメンでいいね」と、強制的に注文を取ると、<br />
「イカソーメンの切り方を見せるからおいで」と、６人を厨房に呼びつけて、<br />
「これがイカソーメンだ。他の店のはイカウドンだ」と、包丁さばきの自慢を始めた。<br />
イカソーメンを食べたいのは、本当は僕なのにと思いながら、<br />
６人がオヤジさんに捕まっている間に、イカ刺し定食を猛烈な勢いで食べ終えた。<br />
そして、オヤジさんに聞こえないくらい小さな声で「ごちそうさま」と言うと、<br />
お金をカウンターにそっと置いて、そそくさと店を出た。<br />
イカは美味しかったのだろうが、味がよくわからなかった。</p>
<p>夕食は、朝に入れなかった店に再び行ってみた。<br />
イカソーメン定食を頼むと、注文した通りにイカソーメン定食が出てきた。<br />
当たり前のことなのだが、何だか嬉しい。<br />
イカはソーメンのように細く綺麗に切られていた。<br />
誰から見られることもなく、自分の好きなように醤油にイカソーメンをつけた。<br />
ホッケのつみれ汁と一緒に食べる函館のイカは、やはり最高に美味しかった。</p>
<p><strong>写真・文　神戸眞平</strong>（ごうど しんぺい／トラベルグラファー）</p>
]]></content:encoded>
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		</item>
		<item>
		<title>♯07 お礼の旅～幾春別</title>
		<link>http://cameralife.jp/cl-column/2293</link>
		<comments>http://cameralife.jp/cl-column/2293#comments</comments>
		<pubDate>Thu, 01 Jul 2010 05:12:27 +0000</pubDate>
		<dc:creator>CL編集部</dc:creator>
				<category><![CDATA[CL Column]]></category>
		<category><![CDATA[神戸眞平の「北海道に恋した風」]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://cameralife.jp/?p=2293</guid>
		<description><![CDATA[トラベルグラファー・神戸眞平さんによる旅エッセイ「北海道に恋した風」。第7回目は「お礼の旅～幾春別」です。]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><img src="http://cameralife.jp/wp/wp-content/uploads/2010/07/70da3a77856be0cd1451b8a6f190edfb.jpg" alt="" title="" width="670" height="447" class="alignleft size-full wp-image-2295" /><br />
撮影地：幾春別　OLYMPUS OM-1N  ZUIKO50mmF1.8　f8　1/250　NEOPAN400PRESTO<br />
<br />
北海道で怪我をして東京に戻ってから、<br />
先生に指示された通り、すぐに外科の病院へ行った。<br />
幸いなことに傷口はすでに塞がって、縫う必要はなかった。<br />
ひと月ほどして、傷がほぼ治ったところで、<br />
お世話になったお礼を言うために、僕は再び北海道へ行くことにした。</p>
<p>新千歳空港から岩見沢まで列車に乗り、<br />
岩見沢からは記憶を頼りに、幾春別行きのバスに乗った。<br />
終点でバスを降りると、お世話になった病院はすぐ近くにあった。<br />
町の中を少し歩いてから病院の中に入り、お礼を言いに来たことを告げると、<br />
受付の女性は、ちょっと驚いたような顔をして、<br />
「先生を呼んできます」と言うと、奥へと消えていった。<br />
しばらくすると、白衣を着た女性がやって来た。<br />
男の先生が現れると思っていたので、少し戸惑っていると、<br />
その女性は、「母です」と言った。<br />
どうやら親子２代の病院のようで、治療してくださったのは息子さんのようだった。<br />
母親先生は、怪我のことを息子先生から聞いていて、<br />
「あなただったんですね」と言いながら、僕の顔をしげしげと眺めた。<br />
心配してくださっていたらしい。<br />
残念ながら息子先生は、来週にならないと戻らないという。<br />
母親先生はカルテと傷口を見ながら、「無事に治ってよかったですね」と言った。<br />
息子先生と同じように、母親先生もとても優しくて、<br />
血の繋がりというものは、やはりあるものだと実感した。<br />
帰りがけに、「東京の人から見て、このあたりはどんな感じですか」と聞かれたので、<br />
「静かでとてもよいところだと思います」と、素直にお答えした。</p>
<p>病院でのお礼を済ませてから、三笠のターミナルに戻り、<br />
今度は駐在所にお礼を言うために、別のバスに乗り込んだ。<br />
バスの運転手さんが僕を見て、「さっき、幾春別行きに乗っていた人でしょ」と言った。<br />
駐在所に近いバス停を教えてもらって降りると、駐在所はまさに目の前だった。<br />
しかし、残念なことに中には誰もおらず、<br />
不在にしていますという札と、用件承り帳が置いてあるだけだった。<br />
しばらく待ったが誰も戻って来ないので、訪れた理由を書き置きして、<br />
そばにあった電話帳で駐在所の電話番号を調べて、東京から電話をすることにした。<br />
お巡りさんに会うことができれば、お礼が言えたし、<br />
札幌のご夫婦のことも教えてもらえたかもしれないと思うと、ちょっと残念だった。</p>
<p>東京に戻ってから、駐在所に何度か電話をしたが、<br />
結局つながらずに、そのままになってしまった。<br />
巡回していることが多く、駐在所にいる時間が少ないのかもしれないし、<br />
電話番号を間違えてメモしてしまったのかもしれない。<br />
こうしてみると、親切なご夫婦が車で通りかかったことも、<br />
お巡りさんが駐在所にいてくれたことも、<br />
優しい先生と看護婦さんがいる病院に運ばれたことも、<br />
怪我をしたこと以外は、すべて運がよかったのかもしれない。<br />
顔に少し傷が残ってしまったが、<br />
幾春別への旅は、僕にいろいろなことを教えてくれたのだった。</p>
<p><strong>写真・文　神戸眞平</strong>（ごうど しんぺい／トラベルグラファー）</p>
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		<title>♯06 顔面強打～三笠</title>
		<link>http://cameralife.jp/cl-column/1941</link>
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		<pubDate>Wed, 02 Jun 2010 01:41:22 +0000</pubDate>
		<dc:creator>CL編集部</dc:creator>
				<category><![CDATA[CL Column]]></category>
		<category><![CDATA[神戸眞平の「北海道に恋した風」]]></category>

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		<description><![CDATA[トラベルグラファー・神戸眞平さんによる旅エッセイ「北海道に恋した風」。第6回目は「顔面強打～三笠」です。]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><img src="http://cameralife.jp/wp/wp-content/uploads/2010/06/06.jpg" alt="" title="" width="670" height="447" class="alignleft size-full wp-image-1942" /><br />
撮影地：万字　OLYMPUS OM-1N　ZUIKO35mmF2　f4　1/30　NEOPAN400PRESTO<br />
<br />
三笠ターミナルから発車したバスに、あてもなく飛び乗った。<br />
終点で降りたのは僕ひとりで、あたりには何もなかった。<br />
坂道を登っていくと、小さな水の流れがあったので、<br />
少し遠回りをして、渡りやすそうなところで流れを越えた。<br />
帰りにまた流れのところに来た時、遠回りをするのがちょっと面倒になった。<br />
よく見ると飛べそうな幅なので、思い切って飛んでみた。<br />
しかし、飛ぶには飛んだが、勢いがついたまま足がもつれて、<br />
石だらけの地面に、顔からそのまま激突した。</p>
<p>起き上がると、眼鏡はひしゃげ、携帯電話は遠くにすっ飛んでいた。<br />
さらに驚いたことには、地面に大量の血が流れ落ちていた。<br />
あわてて鏡を取り出して見ると、眉間が割れている。<br />
凶器攻撃を受けたブッチャーみたいだ。<br />
とりあえず薬屋に行かねばと、ハンカチで顔を押さえながら坂道を下っていく。<br />
こんな道は誰も通らないだろうと思っていたが、たまたま1台の軽自動車が通りかかった。<br />
呼び止めようかと躊躇していると、車は少し通りすぎて自然と止まった。<br />
車から降りてきたご夫婦が驚いて、「熊に襲われたんですか」と声をかけてきた。<br />
事情を説明して、薬屋まで乗せて欲しいとお願いしたところ、<br />
「この傷は病院に行かないとだめです」と言われ、乗せていただくことになった。<br />
「タロちゃん、心配ないわよ」と、奥さんが後部座席に乗っている大型犬に声をかけるが、<br />
突然乗り込んできた血まみれ男に驚いて、タロちゃんは完全に固まってしまっている。<br />
ご夫婦は札幌に住んでいて、三笠の地理に詳しくないということで、<br />
たまたま見つけた駐在所へ、ご主人が病院の場所を聞きに行ってくれた。<br />
しばらくしてから、「世の中は狭いね。Tさんがいたよ」と笑いながら戻ってきた。<br />
以前、近所にいたお巡りさんが札幌から転勤になって、この駐在所にいたらしい。<br />
「怪我人がいるのに、話し込んでちゃだめでしょ」と、ご主人は奥さんに怒られていた。<br />
駐在所で休日診療をしている病院を教えてもらい、連れていってもらえることになった。</p>
<p>病院に着くと、先生は僕を見るなり、「ありゃー」と声を出した。<br />
そこは内科の病院だったので、血だらけの患者は珍しいのかもしれない。<br />
外科の病院を捜してもらったが、休日で電話がつながらず、<br />
結局その病院で、できる限りの処置をしてくれることになった。<br />
若い看護婦さんが点滴の針を刺そうとするが、<br />
動揺しているのか上手くいかず、僕の腕をプスプスと突きまくっていた。<br />
しかし、顔の怪我に比べれば、たいしたことではない。<br />
先生と数人の看護婦さんがつきっきりで処置をしてくれて、<br />
気がつくと、病院に運ばれてから4時間以上が経過していた。<br />
とりあえず応急処置が終わり、しばらく休んで落ち着いたところで、<br />
先生と看護婦さんが、近くのバス停まで僕を送ってくれた。<br />
先生はバスの運転手さんに、「怪我をしているので、安全運転で」とお願いをしてくれた。<br />
看護婦さんは僕に、「ハンカチをどうぞ」と渡してくれた。<br />
真っ赤に染まっていたハンカチは、きれいなブルーに戻っていた。</p>
<p>この状態で旅は続けられないので、東京に戻ることにした。<br />
空港で飛行機を待つ間、男の子が僕のことをじろじろと見ていた。<br />
僕の顔にはカタカナの「エ」の字の形に、大きな包帯と絆創膏が貼られている。<br />
鏡で見ると、ちょっと笑ってしまうような間抜けな顔だ。<br />
その顔を見ながら、怪我が治ったら再びお礼に来ようと思った。</p>
<p><strong>写真・文　神戸眞平</strong>（ごうど しんぺい／トラベルグラファー）</p>
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		<item>
		<title>♯05 途中下車で出会った町～森</title>
		<link>http://cameralife.jp/cl-column/1925</link>
		<comments>http://cameralife.jp/cl-column/1925#comments</comments>
		<pubDate>Thu, 06 May 2010 03:05:51 +0000</pubDate>
		<dc:creator>CL編集部</dc:creator>
				<category><![CDATA[CL Column]]></category>
		<category><![CDATA[神戸眞平の「北海道に恋した風」]]></category>

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		<description><![CDATA[トラベルグラファー・神戸眞平さんによる旅エッセイ「北海道に恋した風」。第5回目は「途中下車で出会った町～森」です。]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><img src="http://cameralife.jp/wp/wp-content/uploads/2010/05/2d58955e71d659100f93cc635b29cfb8.jpg" alt="" title="" width="670" height="447" class="alignleft size-full wp-image-1928" /><br />
撮影地：森　OLYMPUS OM-1N　ZUIKO 28mm F3.5　f8　1/125　NEOPAN400PRESTO<br />
<br />
空はどんよりと曇り、海には霧がかかっていた。<br />
空と海との境界は、はっきりしなくなっている。<br />
そんな中をなんとなく歩いてみたくなって、森駅で途中下車をした。<br />
荷物を少なくするために、カメラ以外のものはコインロッカーに入れておく。<br />
百円玉を2枚を入れると閉まるには閉まったが、<br />
再び開くのか心配になるほど、ぼろぼろのコインロッカーだった。</p>
<p>町の中のあちらこちらに、桜まつりのポスターが貼られていた。<br />
会場の公園に行ってみると桜は満開で、多くの人で賑わっていた。<br />
露店で森名物のいかめしと缶ビールを買い、桜の木の下でごろりと横になる。<br />
熱々のいかめしを食べて冷たいビールを飲むと、とても幸せな気分だ。<br />
会場ではラジオの公開放送をやっていて、演歌歌手の歌声が流れていた。<br />
その声を聴いていると酔いも手伝って、うたた寝をしてしまった。<br />
しばらくしてステージに行ってみると、すでに放送は終わっていたが、<br />
森町出身の歌手が、地元の人たちと輪になって踊りながら歌っていた。<br />
あたりには、あたたかな空気が流れていた。</p>
<p>桜まつりの会場を後にして歩いていると、右腕に軽い衝撃を感じた。<br />
見るとセーターの肩から腕にかけて、白と茶のまだら模様になっている。<br />
空を見上げると、電信柱にカモメが止まっている。<br />
やりやがったなとカモメを睨むが、カモメは素知らぬ顔だ。<br />
一体何を食べると、こんなマーブル状のドロドロが排出されるのだろうか。<br />
ティッシュペーパーを出そうとしながら、ふと前方を見ると、<br />
道路に自転車と子供が横たわっている。<br />
トラックを避けようとして、転倒したらしい。<br />
助けなければと思いつつも、こちらもカモメの糞まみれだ。<br />
究極の選択を迫られた僕は、自分のことを優先させてしまった。<br />
糞の除去にほぼ成功した時、すでに子供はトラックの運転手に助け起こされて、<br />
無事に自転車をこいで走り去っていくところだった。<br />
やはり助けに行くのが先だったかと、僕は心の中で反省した。<br />
 　<br />
ホテルでセーターを洗ってから、夕食をとりに近くの食堂に入った。<br />
空いているテーブルに座ると、ご主人が気を利かせて暖房を入れてくれた。<br />
しかし、スイッチを入れると同時に、熱風が僕の左側頭部を直撃した。<br />
せっかくのご厚意なので、しばらくは我慢していたが、<br />
頭の右と左の温度が明らかに違ってきたので、暖房を止めてもらった。<br />
ご主人は、僕の料理を作っている真っ最中にトイレに行くという暴挙に出たが、<br />
せめて手は洗ってくれているものと信じたかった。<br />
ホテルに戻ってベッドで寝ていると、誰かがスピーカーで叫んでいる。<br />
窓から外を見ると、アイスクリームの移動販売車だ。<br />
こんな時間にこんな場所で商売になるのだろうかと、しばらく見ていたが、<br />
花冷えの夜にアイスクリームを買いに来る人は、ひとりもいなかった。</p>
<p>うたた寝をしたせいか、カモメに糞をかけられたせいか、熱風が直撃したせいか、<br />
ご主人が手を洗わなかったせいか、アイスクリーム売りに叩き起こされたせいか、<br />
その夜、僕は体調を悪くしてしまった。<br />
しかし、僕は何だかこの町が気に入って、それから何度も訪れることになるのだった。</p>
<p><strong>写真・文　神戸眞平</strong>（ごうど しんぺい／トラベルグラファー）</p>
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		<item>
		<title>♯04 寝台車の女性を捜して～根室</title>
		<link>http://cameralife.jp/cl-column/1661</link>
		<comments>http://cameralife.jp/cl-column/1661#comments</comments>
		<pubDate>Thu, 01 Apr 2010 02:33:48 +0000</pubDate>
		<dc:creator>CL編集部</dc:creator>
				<category><![CDATA[CL Column]]></category>
		<category><![CDATA[神戸眞平の「北海道に恋した風」]]></category>

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		<description><![CDATA[トラベルグラファー・神戸眞平さんによる旅エッセイ「北海道に恋した風」。第4回目は第1回目のお話の続きです。]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><img src="http://cameralife.jp/wp/wp-content/uploads/2010/04/733b614f12789cc8be7ef7eb1a856ad3.jpg" alt="" title="" width="670" height="447" class="alignleft size-full wp-image-1663" /><br />
撮影地：花咲　OLYMPUS OM-1N　ZUIKO 50mm F1.8　f11　1/500　NEOPAN400PRESTO<br />
<br />
釧路へ向かう寝台車でＹさんに出会ってから半年後、<br />
僕はまた、北海道に行くことにした。<br />
いつもはあてのない風来坊の旅が多いが、<br />
今回は、寝台車で撮らせてもらった写真とおみやげを持って、<br />
彼女が住む根室を訪れることにした。<br />
こういう機会がないと、根室に行くことはそうはないだろう。<br />
とはいっても、彼女の下の名前も住所も聞きそびれてしまい、<br />
わかっているのは「根室のエレクトーンのＹ先生」ということだけだった。<br />
しかし、何とか見つかるのではないかと思い、<br />
捜す猶予は１日だけ、というルールを自分で決めて、根室へと旅立った。</p>
<p>陸路経由で津軽海峡を渡り、ようやく根室駅に着いて、深呼吸をひとつ。<br />
東京から根室は、やはり遥かに遠かった。<br />
まずは駅前の交番に入って、「ごめんください」と声をかけてみる。<br />
しかし、巡回中なのか、呼べど叫べどネコ１匹出て来ない。<br />
仕方がないので自力で探すことにして、電話ボックスに入る。<br />
エレクトーンはヤマハの製品なので、<br />
ヤマハ関係で調べれば何かわかるだろうと、電話帳を開いてみた。<br />
東京のものとは比べものにならないほど薄い電話帳には、<br />
ヤマハの名前のついている店は、ひとつしか載っていなかった。<br />
早速、そこに電話をしてみると、「うちは違います」という答えが返ってきた。<br />
ヤマハはヤマハでも、船のエンジンを扱っている店のようだ。<br />
空振りかと思ったが、「エレクトーンだったら、Ｋ時計店だと思いますよ」と教えてくれた。<br />
すぐに案内ができるということは、この手の間違い電話が多いのかもしれない。<br />
時計店でエレクトーンというのも妙な気がしたが、<br />
Ｋ時計店の電話番号を調べて電話をしてみた。<br />
すると、確かにエレクトーン教室をやっていて、Ｙという苗字の先生がいることもわかった。<br />
電話帳に載っている住所と、駅にある看板地図を見比べてみると、<br />
それほど遠くはなさそうなので、とにかくＫ時計店に行ってみることにした。<br />
途中で迷いつつも、郵便配達の人が丁寧に道を教えてくれて、<br />
10分ほどで無事にたどり着くことができた。<br />
Ｋ時計店は、時計以外に楽器やレコードも扱っている大きな店だった。</p>
<p>店に入ると、何人かの店員さんが丁寧に出迎えてくれた。<br />
僕の電話に応対した男性に、かくかくしかじかで尋ねて来ましたと説明をして、<br />
彼女の写真を見てもらうと、確かにＹ先生だと確認が取れた。<br />
しかし、あいにくその日はレッスンがお休みで、彼女は店に来ていなかった。<br />
「せっかくですから、先生を呼びましょう」と、男性が電話の受話器に手を伸ばした。<br />
そうは言っても、休みの日に呼び出すのは申し訳ない気がした。<br />
会えたら会えた、会えなかったら会えなかったで、それも良い。<br />
白いフレームに入れた写真とおみやげを置いて、お礼を言って店を出た。<br />
わずか５分ほどの滞在だった。<br />
思っていたよりも簡単に捜し出せてしまい、午後はすることがなくなってしまった。<br />
はるばる根室までやって来たのだ。<br />
どこへ行こうかと少し考えて、僕は納沙布岬へ向かうバスに乗り込んだ。</p>
<p>あれからもう、どれほどの年月が過ぎただろうか。<br />
彼女はいまも元気に、根室でエレクトーンの先生をしているのだろうか。</p>
<p><strong>写真・文　神戸眞平</strong>（ごうど しんぺい／トラベルグラファー）</p>
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		</item>
		<item>
		<title>♯03 オホーツクに落ちた青年～北浜</title>
		<link>http://cameralife.jp/cl-column/1614</link>
		<comments>http://cameralife.jp/cl-column/1614#comments</comments>
		<pubDate>Tue, 02 Mar 2010 01:30:10 +0000</pubDate>
		<dc:creator>CL編集部</dc:creator>
				<category><![CDATA[CL Column]]></category>
		<category><![CDATA[神戸眞平の「北海道に恋した風」]]></category>

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		<description><![CDATA[トラベルグラファー・神戸眞平さんによる旅エッセイ「北海道に恋した風」。第3回目は北浜でのお話です。]]></description>
			<content:encoded><![CDATA[<p><img src="http://cameralife.jp/wp/wp-content/uploads/2010/03/goudo_column.jpg" alt="" title="" width="670" height="447" class="alignnone size-full wp-image-1615" /></a><br />
撮影地：藻琴　OLYMPUS OM-1N　ZUIKO 2８mm F3.5　ｆ11　1/250　NEOPAN400PRESTO<br />
<br />
斜里駅から、網走行きの列車に乗った。<br />
乗客はまばらで、車内はとても静かだ。<br />
鉛色の空の下、流氷がびっしりと敷きつめられたオホーツク海を眺めながら、<br />
キオスクで買ったパンをかじっていると、ほどなく北浜駅に到着した。</p>
<p>北浜は流氷に一番近い駅と言われるだけあって、駅から流氷までは目と鼻の先だ。<br />
しばらく歩いて海岸に降りて、ひとり静かに流氷を眺めていると、背後から、<br />
「流氷やないですかあ！」という大きな声が聞こえてきた。<br />
振り返ると、ひとりの青年がこちらに向かって全速力で走って来る。<br />
あたりを見回してみたが、青年と僕しかいないので、<br />
彼は僕に話しかけているつもりなのか、<br />
そうでないとすると、とてつもなく大きなひとり言なのだろう。<br />
青年は、僕に気づいていないかのように走り抜けると、そのまま流氷に跳び乗った。<br />
そして、ゆらゆら揺れる氷の上を、ぴょんぴょん跳び移りながら、<br />
「乗れるやないですかあ！」と、また誰に話しているともわからない大声を出しながら、<br />
どんどん沖へと向かっていった。<br />
浮いている氷の上に乗るのは危ないなあ、と思いながら見ていると、<br />
ドッボーンという音がして、<br />
青年は突然、僕の視界から消えた。<br />
一瞬の静寂の後、「シャレにならんがなあ！」という叫び声と、<br />
バシャバシャもがいている青年の姿が見えた。<br />
さすが、関西人だ。　<br />
普通ならば「助けて！」と叫ぶところなのに、<br />
氷の海に落ちても「シャレにならんがなあ！」を連発して、お笑いの心を忘れない。<br />
助けようかと思う間もなく、青年は自力で氷の上に戻ってきた。<br />
さすが、関西人はパワフルで生命力も強い。<br />
青年は再び「シャレにならんがなあ！」と大きく叫ぶと、<br />
今度は「さっぶう～」と、寒がりはじめた。<br />
それはそうだろう。　氷の海に落ちたのだから、寒いに決まっている。<br />
「さっぶう～、さっぶう～」を連発しながら、<br />
彼は来た時と同じく、僕に気づいていないかのように、<br />
来た時をさらに上回るスピードで走り去っていった。<br />
その後ろ姿は、ウルトラＱに出てくるケムール人のようだった。</p>
<p>目の前で勝手にどんどん進んでいく出来事に、やや呆気にとられつつ、<br />
写真を撮りながらしばらく歩き、駅へと戻った。<br />
冷えた体を温めようと、近くにある喫茶店に入った。<br />
テーブルは4組のお客さんで満席だったので、僕はカウンターに腰を下ろした。<br />
温かいコーヒーを飲みながら、ひと息ついていると、<br />
マスターと常連客らしき人が話をしていた。<br />
「毎年いるんだよね、ああいう人が」<br />
「乗っちゃいけないって言われているのに、乗っちゃうんだよね」<br />
「春になって流氷がなくなると、海の底から見つかるんだよね」<br />
「ツアーで来ている人は気づくけど、ひとりの人は落ちてもわからないから困るよね」<br />
きっと青年はここに転がり込んで、濡れた衣服を乾かさせてもらったに違いない。<br />
ひょっとして彼がまだいるかもしれないと、あたりを見回してみたが、<br />
小さな喫茶店の中に、青年の姿を見つけることはできなかった。</p>
<p><strong>写真・文　神戸眞平</strong>（ごうど しんぺい／トラベルグラファー）</p>
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